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あんちゃん

私は北山くんが座長を勤める舞台を観るのは初めてだったので、発表された日からずっとそわそわしてしていた。

 

6月なんてまだまだ先だなと思っていたのに、気が付いたらあっという間に初日を迎えて、そして気が付いたらあっという間に大千穐楽

 

本当にびっくりするくらい早かったなと。

 

家族をテーマにした作品ということを知り、ポスターの雰囲気を見て想像を膨らませつつ

どんな内容なのか、初日を迎えるまで色々と考えながらずっと観劇の日を楽しみに過ごして来た。

 

 

自分的な初日を迎えて、大きな看板の北山くんを見て、言葉では上手く表せないけれど、ただひたすらに嬉しいという気持ちがこみ上げて来た。

 

グローブ座は自分が想像していた以上に小さくて

でも、その小さなステージに立っている

座長であり1人の俳優としての北山宏光の背中はあまりにも大きく、そして逞しくて

ただステージに立っているだけで完全に魅了された。

 

 

北山くんが放つ最初の台詞

 

「24年」

 

ライブとはまた違って聞こえる北山くんの声。

 

箱が小さい分、北山くんの声が会場いっぱいに響き渡る。

 

その感覚が今も忘れられません。

 

 

 

お父さんが出ていく前の凌ちゃん。

 

お父さんが出ていった後の凌ちゃん。

 

30歳の凌くん。

 

声のトーンから仕草、表情が細かく表現されていて北山くんの演技力に引き込まれ

 

気が付いたら自分も物語の中に入り込んでる様なそんな感覚。

 

話の中に入り込んだ時には

 

そこにはもう「北山宏光」は存在しなくて

北山くんは

あんちゃんの物語の中にいる「凌」だった。

 

 

舞台や映画など何でもそうなのですが

観ると深読みしたくなる性格なので

 

物語の中で明かされていない事や

このシーンではどんな想いだったのだろうかなど、

ひたすら悶々と考えていました。

 

 

1番最初に家を出て行こうとした凌ちゃん。

お母さんに引き止められ

手に握り締めていたボールをゆっくりポケットにしまう時どんな感情だったのだろうか

小学2年生で自分の気持ちを精一杯押し殺して「何処へも行かないよ……何処にも行かないから……」と言う勇気はどれだけのものだったんだろうと。

力一杯に洋服の裾を掴んで力を込める凌ちゃんの姿を見てそんな事を思った。

 

30歳の凌くんが「今すぐにでもこの家を出ていこうと」と発言している所からも

小学2年の凌ちゃんの中でお父さんの所へ行くという気持ちは固まっていたし、それ程お父さんに会いたかったし大好きだったんだろうな。

でも同じくらいにお母さんも大切で、いつも笑顔で弱音を吐かないお母さんの〝唯一のお願い〟を断れなかったのではないだろうか。

 

自分は家を出て行きたくても出て行けなかった

だから冴と准が理由をつけて家を出て行った事に対して思う事や自分の中の煮え切らない想いも沢山あったと思う。

あの最後の怒涛の台詞1つ1つから凌くんの気持ちが伝わってきて聞いていて胸が苦しくなった。

 

「人の為と書いて偽りと読む」

 

この台詞は突き刺さる人も多かったんじゃないかなと。

 

私はすごく突き刺さりました。

結局は全部自分の為。

本当に人の為だけに自分が出来た事って果たしてどれ位あるのか。

果たしてあるのかすらも分からない。

 

凌くんは全部お母さんの為

 

そんな凌くんが今まで考えてきた事、冴と准に思ってきた事、本当は出て行きたかった事、お父さんに会いたかった事

 

今まで誰にも言えずに溜め込んできた感情を

全部ぜんぶ吐き出すことが出来て良かった……

少しは気持ちが楽になったかな……とか

そんなことを思った。

 

お父さんが記憶を無くして子供達に会いたいと言ってくれたから、こうやってまた家族が揃って、今まで思っていたことも本音で言い合う事が出来た。

お父さんが出て行ってしまった理由は闇に葬られたままだけれでも、それでも結果としては再会するきっかけになったのだからそれで良かったのかなと思う。

 

再会してすぐにお父さんと凌くんが呑みに行った時、ビールを注いであげる凌くんの表情が本当に優しくて

久しぶりに再会出来たことが本当に嬉しくて仕方ないんだろうなという気持ちが表情から伝わってきた。

その後のラストシーンでも

ちくわぶ大好きなお父さんをビデオカメラで撮影してる凌くんの表情も同じ様に優しい目をしていた。

 

記憶が無くなっても凌くんのお父さんであることに変わりはないんだと。

 

 

 

 

この後は観劇した方の想像にお任せします。

というような良い意味で少し歯切れの悪い終わり方もまた良かったと思う。

 

また家族が揃って

これからどうなっていくのか

 

 

「母さんが幸せならそれでいいと思うけど」

 

凌くんが願っている幸せは「お母さんの幸せ」



それが叶うといいな。

 

 

 笑いがあって、そしてそれ以上に泣ける

改めて家族に対して思う事や自分に対して考えさせられるような

1つの物語として素敵で最高の舞台でした。

 

 



「舞台を観終わって劇場の扉を開けて出て行くとき、みなさんの心にポッと灯をともせるようなお芝居を目指して頑張ります」

 

以前インタビューで北山くんが言っていた言葉。

 

 

観劇した方の心にはあんちゃんがしっかりと優しくて暖かい光を灯してくれたと思っています。

 

 

またこうやって北山くんの舞台を見れる事を願って。

 

 

2017.8.8